バイク

カブの魅力は何ですか? 『所さんとスーパーカブ』 ロングインタビュー その1

 と、ここまでくると、C65がキレイになったわけじゃない? 今回は登場してないけど、CM90もオリジナルのまんま、キレイよ。そこで、近代の70を買うというね。俺があまり古いのばかり持ってるとさ、カブを好きな人は「待ってました」だし、なんて言うんだろうねー「この良さを分かってくれたんだ」感になっちゃう。でも、「そうでもないんだよ」っていうところを出さないと(笑)。今のカブも乗るんだと、今のカブを昔のバイクに寄せていくと。そんなのもちょっと面白いなと。で、1台出来上がって、それも刺激があって。何だろうね、レストアして昔のものをっていう、王道? もともと王道は嫌いみたいね、俺は。まあ、王道をやってくれている人がたくさんいるから助かるんだけど、そこは。そこが定着しているからね。スタンダードがしっかりしているんで、しっかりしてるからスタンダードなんだけど。しっかりしているんで、壊しがいがあるんだよ。こんなアプローチ、いやいやこんなアプローチっていう。壊しがいがいっぱいある。
 なにもスタンダードを否定しているんじゃないよ、「俺の場合はそうじゃないよ。こんな感じだよ」って新しい風を吹かしているワケじゃない。スタンダードがしっかりしていればいるほど、遊べる。スタンダードがいいに決まっているし、古いやつがキレイにレストアされているやつが一番いいし、俺も欲しい。ましてや、新車なんかがあって、ホンダから「所さん、譲りますよ」なんて言われた日には、嬉しい。そりゃあ、誰もが同じように、私も嬉しい。新車で欲しい。58年ぐらいのカブを。で、そこはみんなと同じように共有するところがあって。でも、いやいやこんなアプローチも面白いんじゃないの? とかってふざけるところも面白がっているんで、今は。そこがすごく拡がってる。OHVとかで作っても、OHCに乗っているからね(笑)。OHVが面白いよっていうのは分かるんだけど、OHCも乗る。あと、みんなカブを……なんて言うんだろうね。

 ボバータイプみたいに仕上げたり、切り刻んで小っちゃくしてカブらしくない感じに仕上げたりで遊んでいるんだけど、そこはそれで面白いワケ。「おっ! カッコイイね」と思うし、1台そんなのあってもいいねとも思う。でも、それを俺がやっちゃって、ボバータイプにして乗っちゃうとハーレーと被るんだよね。方向性が被るんだよ。ボバーにしちゃうと。だから、何だろうな。昔はハーレーもチョッパーにしたりとか、ボバーにしたりとか遊んでたじゃない。でも、いまはポンコツ風にしたり、ちょっと大人っぽいんだよ、最近のワタシのハーレーの作り方は(笑)。そうすると、カブも大人っぽく遊びたい。チョッパーにするのが子どもっぽいって言うわけじゃないよ。それも面白い遊びなんだけど、その辺の若さが溢れるような改造じゃなくって、「いろんなこと分かってらっしゃるんですね」っていう風な改造がしたい。面白みは全部同じだもんね。ハーレーもビーエムも。オジサンたちにとってのカブも同じですよ。ボロく仕上げて、でも、ある場所だけはスゲー手入れてますね、偏ってますねココだけはっていう。みんながやりがちなのはココをやったらコッチも、シンメトリにちゃんとキレイにしちゃいがちでしょ? 対のモノは対でちゃんと付けるっていう遊びをしちゃうじゃない。どうしたって「グリップを右にキレイなの付けたら、左もキレイなの」ってね。エンジンやったんだから、スポークもとか、あっちもこっちもキレイにとか、やっちゃうんだけど。それやっちゃうとツマンナイ。そっちは気がつかなかったの? とか若干手が届いていないっていうのが面白いわけ。誰でもそのグリップさせんじゃん、っていうのはやらない。だって誰でもさせんだから、ソレは。

その2へ続く

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