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『所さんのカスタム論』/ 所さんのホットロッド自転車 Vol.5

【インタビュー】所さんが次にカスタムのベースにしたのは1940年代のSchwinn。今回のカスタムコンセプトはどんな感じですか?

しかし頓着がないよね、俺は。自分で言うのも何だけど。自転車の新しいのが出来上がって来て、いいねっ!てなると前のが邪魔だなぁとかさ。そんで誰かにあげちゃったりして。ホーンなんかも直して、ってかね、プップを直すの面倒なんですよ。電池の位置変えたりさ。合うタンクは何かなぁなんて散々やって組み上がった自転車なのに、そんなことはもう忘れてしまってるんだよ。
編集部
でも、いままでこんな自転車遊び無かったですよね。
そうねぇ、無かったかもね。古いフレーム見つけてきて、それを適当なパーツで組み上げるなんてさ。
編集部
物の本によると、Schwinnのオリジナルに拘ったコレクターは沢山いらっしゃるようなんですけどね。それをカスタムしようってのは無かったみたいなんです。
いるよ、アメリカなんかには。そいつらがさ、YouTubeなんかでさ、Schwinnのカスタムをやっているのをアップしているの見るけど、酷いもんね。いらねぇよこんなのってやつ。見てらんない。なのに何万回もアクセスがあったりなんかして。俺も出そうかなぁなんて思うよ。
編集部
所さんにとってカスタムとはいったいどういうものなんですか?
うーん、なんだろうね。俺はさ、商売できないよね。そのひとに合ったもんなんか作らないもん。サンダンスなんかはできるよね。その人の好みに合ったモノを作ることができる。でも俺はそういうのはできない。自分が好む絵柄しか作れないもん。うん。だから、ある程度の人にしか理解されない世界なのかもしれない。例えばロードストローラーを描いたのも自分の世界観だから。
編集部
例えば、4WD系はこういうホイールにこのくらいの車高がかっこいいですよとか、なんか誰かがやったモノをみんなが真似して、それがカスタムみたいなことになっていると思うんですね一般的には。
それが安心だし、リスク背負わないでしょ。お金出した分だけの楽しみっていうかさ。例えば、ロードストローラーなんかは、みんなが可愛いって言ってくれるんだけど、それはたまたまそう言ってくれる人が多かったって話で。描いてるときに「コレはウケちゃうぞ!!」って本気で思って描いてるわけじゃないもん。だから、悪ふざけだよね。悪ふざけ。でもさ、悪ふざけも、そんなに思いつかないでしょ?
編集部
たしかに。
それからね、良い気分で一服したいってのもあるかも。ほら、俺の場合、カスタムは自分でやってたりするわけですよ。ライトの位置はココが良いかなぁとか、借り組みして、お茶飲みながら眺める。そんなのが楽しいんですよね。
編集部
なるほど。
あとはさ、みんな自分を盛り上げる演出が下手だよな。つまりは用が足りれば良いってだけなら、あらゆる工具が全部入ってるフルセット買って来りゃ十分。でもそんなの使わないもんね。だって絵柄良くないもの。一服したときの風景がダメ。やっぱりアンティークのボロい工具箱に適当な工具が入って、ボロタオルがその脇に掛かっててって、そういうのでやっつけた感じがかっこいい訳ですよ。
編集部
その絵柄を楽しむことも全て含めてカスタムの愉しみという事になるわけですよね。
そうなんだよね。例えば、テレビなんかでも、工具がねぇとか、ミリじゃなくてインチじゃねーかよ、とか文句言ってますけど、それがすでに面白い訳ですよ、私にとっては。
編集部
ほぉぉぉぉ。
例えばね、何かを付けようって時に、押さえてくれる人がいない場合あるでしょ?そんな時はバイスプライヤーですよ。カッチンってやつ。プライヤーで挟んで固定出来たとき、俺はもう楽しくてしょうがないよ。本来は2人いなきゃいけないような作業を、プライヤー君がカッチンと止めてくれてるって、それだけで楽しいですよ。
うん。人手が足りてりゃ良いってわけじゃないんですよ。1人でやった方が楽しい場合もあるわけなんだよ。さっきなんか、机の上で作業やってて、瞬間接着剤を使おうと思って手に取ったら、瞬間接着剤の入れ物から中身が垂れてて、ベンツのカギが瞬間接着剤にくっついてきた(笑)。サポートしてくれる人がいたらそうはならないでしょ? それじゃつまんない(笑)。ボンドのケースにカギが付いて来ちゃうから面白いの。俺としてはよくぞ付いてくれましただよ。
編集部
失敗じゃないんですね。
そうそう。それからさ、良い場面って言うのがあるんですよ。例えば、トヨタとか日産とかさ、クルマの工場の映像とかあるけど、生産ラインの途中にそのクルマが一番かっこいいシーンがあるよね。まだ骨が見えてて、エンジンがやっと乗って、ドアはまだ付いていない状態で、空中を移動しているその瞬間。それこそがこのクルマの一番かっこいい瞬間だっ思うんですよ。フェンダーが付いて、安全器具が付いて、椅子が付いてって、完成に進むに従ってどんどんかっこ悪くなっていく(笑)。そのクルマがかっこいい山場を越えていくっていうかさ。
編集部
制作過程のかっこよさを眺めて愉しむことができる。それこそがカスタム最大の醍醐味なのかもしれませんね。

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