ベース車両から降ろしたエンジンは、ご覧のとおり全体が錆びて白く粉を吹いた状態。以前、ジャングルで回収されたゼロ戦のエンジンがテレビに出ていましたが、まさにそんなような感じ。これはさすがにきれいにするのは大変なんじゃ?と思いきや、レストアを担当する46worksの中嶋さんは余裕の表情。
ちなみに、世田谷ベースで行われた打ち合わせを元に、すでにチューニングの方向性も見えているようで、「乗ったらビックリするぐらい楽しいエンジンになりますよ!」とニッコリ微笑む中嶋さんなのでした。所さんがBMWのフラットツインに見せられた最大の理由。それは、エンジンデザインの美しさ。ノペっとしたクランクケースと飛行機みたいな円筒形のシリンダー、そして丸いヘッド。他のエンジンではちょっと見られない機能美に見とれちゃいます。
ベースになったR75/6はフラットツインの750cc。この時代のBMWフラットツインには、用途やパワーなどで排気量が600から1000ccまで存在しているのですが、ボアが違うだけでストロークやクランクケースの形状などは基本的に同じ。そのため、どれをベースにしても簡単なチューニングを施すことで排気量を1000ccにすることが可能なのです。
BMWのフラットツインは空冷OHV2バルブだから本当にシンプルな設計。しかもピストンやシリンダーの交換なんて車体に搭載したまますぐできてしまう。整備性の良さでいったら世界一と言っても過言ではありません。取り外した部品をチェックしたら内部の摩耗は少なめ。クランクやコンロッドもそのまま使うことに。
シリンダーが装着されたまま降ろされたエンジンは、作業台の上に載せられて、シリンダーヘッド、シリンダー、ピストンの順番にバラされていきます。その後、ケースを分解して、クランク、コンロッド、カムシャフトを取り外して行くと全バラ状態に。3時間も掛からずに、作業は終了です。
次はエンジンカバー、ヘッド、クランクケースなど、この錆びた状態を仕上げていきます。【vol.5へ続く】